美容医療における「フィラー(注入材)」は、主に顔のしわやたるみの改善、輪郭形成などを目的に使用される充填剤の総称です。実際にはさまざまな種類がありますが、代表的なものを以下に挙げます。
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## 1. ヒアルロン酸(Hyaluronic Acid)フィラー
### 概要
– **最も一般的かつポピュラーなフィラー**
– 体内に存在するヒアルロン酸と構造が類似しており、安全性や施術のしやすさから多くの美容クリニックで利用されています。
### 特徴
– **持続期間**:個人差がありますが、6ヶ月~1年程度(部位や製剤による)
– **吸収性**:体内で分解・吸収される
– **主なブランド**:ジュビダーム®(Juvéderm®)、レスチレン®(Restylane®)、テオシアル®(Teosyal®)、ベロテロ®(Belotero®)など
– **メリット**:アレルギーリスクが低い、万が一仕上がりが気に入らない場合でも分解酵素(ヒアルロニダーゼ)で除去しやすい
– **デメリット**:永久的ではないため、効果を維持したい場合は定期的に注入が必要
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## 2. カルシウムハイドロキシアパタイト(Radiesse® / レディエッセ)
### 概要
– 骨や歯の主成分である「ヒドロキシアパタイト」の粒子をゲル状のキャリアに分散させたフィラー
– ブランド名「レディエッセ(Radiesse)」で知られています。
### 特徴
– **持続期間**:1年~1年半程度
– **吸収性**:骨の成分に似ているため、注入後はゆるやかに分解・吸収される一方、コラーゲン生成を促進する作用がある
– **メリット**:リフトアップ効果が比較的長く続きやすい、コラーゲン増生作用により自然な質感を得られる
– **デメリット**:ヒアルロン酸のように分解酵素で溶解できないため、修正が難しい
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## 3. ポリ-L-乳酸(Poly-L-lactic acid)フィラー
### 概要
– 商品名「スカルプトラ(Sculptra)」などで知られている合成ポリマー由来のフィラー
– もともとは医療用糸などでも使用されており、体内で徐々に分解されていきます。
### 特徴
– **持続期間**:注入を数回繰り返すことで、1~2年(個人差あり)
– **作用機序**:コラーゲン増生を促進し、時間をかけてハリやボリュームを改善
– **メリット**:しわやたるみを徐々に改善するため、自然な仕上がりになりやすい
– **デメリット**:即効性が低く、効果実感までに数週間から数ヶ月かかることがある
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## 4. PMMA(ポリメチルメタクリレート)フィラー
### 概要
– アクリル樹脂の一種であるPMMAを微粒子化し、コラーゲンと混ぜた製剤
– アメリカでは「ベラフィル(Bellafill®)」などの商品名で展開されています。
### 特徴
– **持続期間**:半永久的とも言われる
– **作用機序**:PMMA粒子が組織に留まり、周囲をコラーゲンが取り囲むように形成される
– **メリット**:長期的な効果が期待できる
– **デメリット**:いったん注入してしまうと分解酵素での除去はできず、修正が困難
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## 5. コラーゲンフィラー
### 概要
– かつては主流だったフィラーのひとつ
– 動物性コラーゲン(牛由来、豚由来など)やヒト由来コラーゲンを使用するケースもある。
### 特徴
– **持続期間**:数ヶ月ほど
– **メリット**:生体親和性が高い
– **デメリット**:動物性コラーゲンの場合、アレルギーリスクがやや高め、最近ではヒアルロン酸の普及により使用頻度は減少
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## 6. 自家脂肪注入
### 概要
– 腹部や太ももなどから自身の脂肪を採取し、遠心分離機で不純物を取り除いた上で、顔やバストなどに注入する方法
– フィラーというよりは「自身の組織を使った移植」ですが、同様の目的(ボリュームアップ)で行われます。
### 特徴
– **持続期間**:定着した脂肪は半永久的ともいわれるが、定着率は個人差大
– **メリット**:アレルギー反応のリスクがほぼない、広範囲のボリュームアップが可能
– **デメリット**:採取部位への負担やダウンタイムが必要、吸収率(生着率)が個人差ある
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## 7. その他・新しいフィラー
### 概要
– 今後も新しい素材や製剤が開発されており、「より長持ち」「より安全性が高い」「より自然な仕上がり」などを追求した製品が研究・製造されています。
### 特徴
– **加水分解コラーゲン**や**ヒアルロン酸+複合成分**など、多様化が進んでいる
– まだデータが少ない製品もあるため、適切な評価や専門医による判断が重要
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## まとめ
一口に「フィラー」といっても、主成分や特徴、持続期間はさまざまです。大きく分けると以下のように分類できます。
1. **ヒアルロン酸**:最も一般的で、安全性と修正のしやすさが魅力
2. **カルシウムハイドロキシアパタイト(レディエッセ)**:コラーゲン増生作用があり、やや長持ち
3. **ポリ-L-乳酸(スカルプトラ)**:徐々にコラーゲン増生して自然な仕上がり
4. **PMMA(ベラフィルなど)**:半永久的に持続するが修正困難
5. **コラーゲンフィラー**:使用頻度は減っているが一部でまだ利用
6. **自家脂肪注入**:自分の組織を使うためアレルギーのリスクが低い
7. **その他の新しいフィラー**:各社が安全性や持続性向上を目指し開発中
施術を検討する際は、それぞれのフィラーの**メリット・デメリット**や**持続期間**、そして自身の目的やライフスタイルに合うかどうかを十分に考慮することが大切です。また、医師の技術力や専門性、施術経験がとても重要ですので、カウンセリングではリスクやアフターケアについても詳しく聞いてみましょう。